藤原和博著「35歳の教科書 今から始める戦略的人生計画」
ちょうど35歳になった今、このまま今の仕事を続けるべきなのか、結婚はどうしよう、、、
そんな悩みがうっすらずっと頭に浮かんでいます。
そんな時に本屋で見つけたこの本。
「大人」とは何なのか、これからやらなければいけないことは何なのか、
自然と自分の中から答えが見えてきた来ました。
「みんな一緒」から「それぞれ一人一人」の時代へ
私たちの親や祖父母の時代は、「みんな一緒」で、ある程度成功してきました。
みんな一緒の価値観を持ちながら、
みんな一緒のモノを買って、
みんな一緒に受験勉強をして、良い大学、良い会社を目指して、
みんな同じくらいの年齢で結婚する。
一人ひとりどうしたいのかを考えなくても、ある程度成功できたし、幸せになれた。
でも、私達の世代は経済が低迷している中で育ちました。
親は「みんな一緒」の価値観を持っているのに、
どこかでそれでは通用しなくなっている空気感を感じながら育ってきました。
著者はそんな社会の変化をこんな言葉で表現しています。
「みんな一緒」→「それぞれ一人一人」
「成長社会」→「成熟社会」
そして、これからの成熟社会のキーワードは
- 多様化
- 複雑化
- 変化
そんな社会の変化に対応して、自分らしい生き方を自分の頭で考えていかなくてはいけません。
正解主義から修正主義へ
成長社会では「正解」を見つけることが重要視されていました。
学校では、計算や暗記といった「情報処理力」を教え込まれました。
でも、これからは「正解」ではなく「納得解」を導き出すことが大切だといいます。
全員共通の「正解」を探すことよりも、
自分が納得できることや、周りの人達を納得させられるということが求められます。
たとえば、理想的な職場を探して転職を続けることよりも、
その職場で成長できることもあるかもしれません。
「いつかぴったりの人に出会えるはず」と運命の人を探すことよりも、
それが幻想だと認めて、相手と理想の関係を「作っていく」ことを目指していけば良い。
幸せの青い鳥を探して旅に出たチルチルとミチルが青い鳥を見つけたのは、普段自分たちが暮らしている家の中でした。
幻想を追いかける時間があったら、まさに今、ここにいる自分自身をしっかりみつめてください。
迂遠なようですが、それが「納得解」にたどり着くための近道なのです。
35歳の教科書 今から始める戦略的人生計画
具体策①ダダダの無限サイクル
ここからは、戦略的ライフプランニングのための具体策をまとめていきます。
一般的に「PDCA」のサイクルを回すことを良しとしていますが、
著者は、変化のスピードが速くなっている現代では、「DADADA」にする必要があると言います。
これを、「ダダダの無限サイクル」と呼んでいます。
物事を実行したら、ダダダと3回修正と行動をする。
ダメだったら、すぐに手を引くのもあり。
可能性があったら、100回でも1000回でも修正する。
まずは、行動する。
ダダダの無限サイクルで突き進む。
失敗したら、またそこで修正をしていく。
最初から正解を求めなくても大丈夫。
具体策②「演じる自分」を持つ
成長社会では、それぞれの役割はハッキリしていました。
でも、今は多様性が求められる成熟社会。
父親=家族の長でもないですし、先生=えらいでもない。
会社の中での自分、家族の中での自分。
役割を演じることによって、はじめてその関係性が作られていきます。
また、失敗したり、落ち込んだりしたときにも、
開き直っている自分を演じることで、
簡単にへこたれないし、這い上がることもできるといいます。
失敗してしまった自分を客観的に面白がってみたりすることができるのかもしれません。
具体策③クリティカル・シンキングで物事を捉える
最も大切なのが、「クリティカル・シンキング」です。直訳すると「批判的な思考力」ということになりますが、
英語のcriticalには「本質的」という意味も含まれますので、私は「複眼思考」と訳しています。
物事を短絡的なパターン認識で捉えない。
「そこには何か裏の事情があるんじゃないか」
「こっちの視点に立てば、まったく違った事実が見えてくる」
といった多面的な複眼志向ができるかどうか。これも大切な大人の条件です。
35歳の教科書 今から始める戦略的人生計画
正解を探すのではなくて、納得解を自らの頭で見つけていく上で、必要なスキルといいます。
今までの常識が通用しなくなっている今だからこそ、
この世の中にある常識が本当なのかを疑ってかかってみる。
正解がないからこそ、自分の頭で常に考え続ける。
それが、これからの大人には必要です。

テレビのコメンテーターの言うことを鵜呑みにするのではなく、
あえて批判的に見てみる。
ひとつのテーマに対して、周りの人とディベートをして、
さらに自分の考えをブラッシュアップしてみる。
そんなことを繰り返す中で、今まで受験勉強だけで身につけた、
正解だけを求めるだけの能力「情報処理力」だけではなく、
物事を批判的に読み解く能力「情報編集力」を身につけることができます。
より複雑で変化の激しい社会を生きていくために、
この「情報編集力」が求められています。
具体策④量をこなす
成長社会では、「がんばれば報われる」という共通の教えがありました。
これからの成熟社会はただ努力をするだけでは太刀打ちできません。
ただ、それはイコール「がんばらなくてもいい」というわけではないといいます。
量をこなさないと身につかないことがあるからです。
本の中では、100を基準に挑戦してみる、1万時間をテーマに取り組んでみることで、
物事の本質がわかったり、技術が磨かれたりするとあります。
著者が初めて本を出版したとき、100軒の書店をまわって売れ行きを観察してみたそうです。
そうすると、自分の理想とする場所に置かれていない場合が多く、だんだんとその理由も分かってきたといいます。
何も会社尽くせという訳ではなく、
自分自身が面白いと思えることを、
自分の技術を磨くためにある程度の数をこなしていくことが大切なのです。
具体策⑤組織内自営業者を目指す
今の社会の中でいつまでも同じ会社にいるとは限りませんし、
会社の名前だけで自分が評価されたりする時代ではありません。
そして、会社で働いているときの自分だけが自分ではありません。
想像してみてください。
バーのカウンターに座った時、右隣が庭師、左隣が畳職人だったら、あなたはどんな会話ができますか。
「○○商事に勤めています」と言っても、職人さんたちは少しも興味を持ってくれません。
あなたは、いかにして固有のスキルを彼らに説明するでしょうか。
話は盛り上がるでしょうか。
もし、彼らとともに杯を重ねられるような人物になっているのだとしたら、
あなたはきっと、もう組織内自営業者なんです。
35歳の教科書 今から始める戦略的人生計画
いきなり特別な技術を磨いて個人事業主になるのは難しいかもしれませんが、
今の組織の中で、会社のお金を使って磨ける技術がないか、
名刺に頼らず自分自身で勝負ができるように自身を磨けないか、
そんな意識を持ちながら働くことで、
会社に依存することなく、自分自身のキャリアを築き上げることができます。
自分自身で勝負することができるようになれば、
好きな仕事を選んで働けるかもしれませんし、
会社に搾取される存在ではなく、会社と対等な関係でいることができるかもしれません。
具体策⑥第三の場所を持つ
著者が校長を勤めた和田中学校では、地元の有志や大学生などに協力してもらい、
生徒たちのの宿題や漢字の練習などをする自主的な学習の場を設けたそうです。
親子や先生と生徒の関係はタテ、友だちとの関係ははヨコ、そして利害関係のない関係がナナメの関係。
このナナメの関係が子どもに限らず大人にも大切だといいます。

先ほどの和田中学校の有志でも、1回につき1000~2000円の交通費を払うだけなので、
有志の大学生によっては赤字になることもあるそうです。
それでも、教員を目指している大学生にとっては、生の中学生に教える機会は
自分を高める絶好のチャンスだという意識で参加してくれるそうです。
自己犠牲ではなく、自分を鍛えるために、新しいナナメの関係の構築がとても有効です。
最後に
この本を読んでいて、ドキッとすることがたくさんありました。
私の父方の家系は教師が多く、努力すること、常識的に生きること、みんなと一緒にという意識が
自然に刷り込まれていました。
そんな価値観に反抗的だった兄を見て育ったこともあり、
私は逆にその意識がより強くなってしまったと思います。
ただ、社会人になってから自然と思い描いていた「レール」とははずれた人生になってきました。
大手の保険会社で挫折して3年目で辞めました。
海外に1年間行ってみたり、学歴なんてまるで関係のないセラピストになったりもしました。
結婚もいまだに出来ていません。
でも、意識はずっと子どもの頃のままなので、
このレールをはずれた人生をどう生きていったら良いのか分からなかった。
でも、この本を通して、今まで刷り込まれてきた価値観を
もう一度自分の中で考えてみて、自分が納得できるような答えを探したいなと思いました。
そして、そこから初めて自分の頭で考えて行動する、
本当の意味での「大人」になれるのではないかと思います。
とても考えさせられる一冊でした。
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