小説が好きです。
でも、ハッキリ言って、この小説はHSPさん向けではありません^^;
ただ、ミステリー、サスペンス好きにはものすごくおススメです!
上下巻あるんですが、下巻に関しては先が気になりすぎて、3日間で読み終わりました。
誰も信じてくれない、、、そして衝撃のラスト
この小説のヒロイン、アナ・フォックスはニューヨークの高級住宅地に暮らす精神分析医。
ただ、あることをキッカケに広場恐怖症となり、夫と娘とは離れて暮らすことになります。
わたしが怖いのは、果てしなく広がる空、見渡すかぎりの地平線、気まぐれな大自然、人を押しつぶしそうとする野外の圧力だ。
ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 上 / 原タイトル:THE WOMAN IN THE WINDOW[本/雑誌] (ハヤカワ文庫 NV 1478) / A・J・フィン/著 池田真紀子/訳
そんな彼女は古い映画を見ること、ワインを飲むこと、そしてカメラのファインダー越しに近所を覗くことで毎日をなんとか過ごしています。
あるとき、隣の家にラッセル一家が引っ越してきます。
夫のアリステア、妻のジェーン、息子のイーサン。
そして、事件が起きます。
いつものように隣の家をカメラで覗いていると、隣の家のジェーンが刺される現場を目撃してしまいます。今すぐ助けなきゃいけない。でも、、、家を出られない。すぐ隣で血を流しているジェーンをなんとか助けなきゃ、、、と外に出る勇気を振り絞ります。
しかし、そのままアナとラッセル家の間の公園に倒れこんでしまいます。
運ばれた病院で警察に必死に訴えるものの、全く信じてもらえません。
大量の薬を服用し、大量のワインを飲酒している。そして、精神的な病に冒されている。
ラッセル家の夫アリステアもイーサンも殺人があったことなど、認めない。それだけではなく、殺されたはずのジェーンを名乗る女性も現れます。
どんなに証拠を探しても、どんなにそれをつきつけても、誰一人として彼女を信じてくれません。
「わたしは頭がおかしかったりしない。どれも作り話なんかじゃない。」小刻みに震える指でアリステアとイーサンを指す。「ありもしないものがみえていたりなんてしない。何もかも、彼の奥さん、彼のお母さんが刺されたときから始まった。あなたたちが調べるべきなのは、それでしょう。質問なら、その件についてしなさいよ。わたしは目撃してないなんて言わないで。わたしは確かに見たんだから」
ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 下 / 原タイトル:THE WOMAN IN THE WINDOW[本/雑誌] (ハヤカワ文庫 NV 1478) / A・J・フィン/著 池田真紀子/訳
ホントに心がとても苦しくなるんです。
彼女は精神科医としてたくさんの人を助けてきた。広くて理想的な家に夫と娘と暮らしてきた。
恐怖症になる前は近所のパーティーにも参加し、ごく普通の女性として生きてきた。
なんなら、普通どころか社会的には上流といえるのではないかと思うくらいです。
それなのに、今は目の前でちゃんと見たことも、証拠として探し当てたものも、そして自分自身が犯人らしき人物から嫌がらせを受けたことも、すべて自分の幻想だったと周りに言われてしまう。目の前に人が死んでいるのに、警察も友人も夫でさえも信じてくれない。
誰にも理解されない孤独。
そのあと、次々に物語の根幹にも関わる事実が暴かれていきます。怒涛の展開にここからは一気読み不可避です。。。
寝たい、寝たいけれども、止まらない、気になる、、、、
ここからはネタばれになるので、自分の心の中にとどめます。
エイミー・アダムスで映画化
ニューヨークタイムズのベストセラーという権威のあるランキングで初登場1位、その後も29週間連続ランクインしました。
そしてついに映画化が決まります。
公開までにこのあと解説する理由から何度も延期になりますが、2021年5月NETFLIXで公開になりました。
あまり映画に詳しくない私は、この女優さんは、魔法にかけられてのイメージが強かったので、こんなダークで孤独な役をやるなんてちょっと意外でした。
予告を見るだけで小説の迫り来る感じが思い出されて、映画もチェックしたい!
でも、この恐怖感とか切迫感とか息苦しさを文字だけで表現できることがまずすごい。
ぜひ映画の前に文字で感じてほしいと個人的には思います。
小説家の小説のような人生
この小説の作者、A・J・フィンの本名は、ダニエル・マロリー。
このダニエル・マロリー自身が小説のような人生なんです。
ダニエル・マロリーはこの小説を書いたとき、出版社で編集者として働いていました。
オックスフォード大学で博士号をとるなど、華麗なキャリアかと思いきや、小説の主人公同様、重い心の病に苦しみます。
マロリーは「うつ病の治療のために、電気けいれん療法を1週間に3回、1、2ヶ月間受けました。」と語りました。「うまくいったよ」とうなずき、「非常に感謝している」と付け加えました。彼は「今でも1年に1回受けている」と言いました。
Mallory said that once, in order to alleviate depression, he had undergone electroconvulsive therapy, three times a week, for one or two months. It had “worked,” Mallory noted, adding, “I’m very grateful.” He said that he still had ECT treatments once a year.
https://www.newyorker.com/magazine/2019/02/11/a-suspense-novelists-trail-of-deceptions
彼の苦しみは自身の心の病だけではなく、母親が乳がんを患い、看病のかいなく亡くなります。また彼の弟も精神的な病、そして嚢胞性線維症という難病指定されている病を抱え、ついには自殺してしまいます。
自身の病だけでなく、家族の度重なる死、悲劇的な人生はまさに小説のよう、、、、
ですが、これ全部ウソです。
彼はオックスフォード大学で博士号も取得していないし、彼の母親も弟も生きてます!
2019年、このウソがThe New Yorker で暴露されたことなどが、映画公演延期のひとつ。
この記事見た瞬間、え、、、と固まりました。
ウソだと言われて、自分の見たものを信じてもらえない小説の主人公と
信じていた悲劇の舞台が全部ウソだと暴露される小説家。
その矛盾が個人的にはドラマティックでぞくっとします。
さいごに
最初は読んでいると主人公の境遇とかに引っ張られて苦しくなるんですが、あきらめないで最後まで読んでほしい。
特に下巻の怒涛の展開は本当に止まらなくなります。
著者は非難の声を浴びますが、作品はそのウソさえもドラマになるくらい面白かったです。
映画はまだ見てないんですが、機会があれば見てみます。
(映画の方は見たら、本当に心がぐったりしそうなので元気なときにします)

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